渡駒誠(2000/10/1) 泉州標準語 実践編No1 実践編No2 実践編No3 実践編No4 実践編No5 実践編No6 実践編No7 番外【落語】


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HP拝見。感動のあまり長文メールにて失礼!



はじめまして。すばらしいHPを拝見し、感動しております。
私は現在、泉佐野市湊町に住み、泉州弁に興味をもつ当年40才の一市民です。

生まれも育ちも泉佐野、とりわけ、ニューヨークで申せば「サウスブロンクス」地区と称される新町の出身であります。ここは昭和50年代に、とある大学がおこなった泉州弁の調査で、「とりわけ数多くの方言が残る」と、新聞に紹介されたこともある、昔ながらの「あらくれ漁師町」です。

内容は、2通いただきました長いですが、かなり気合いが入っています。
そして、うれしい限りです。


ドクターDです。このたび、おかげさまでHP開設にこぎつけました。
題して「ドクトルDの泉州佐野弁講座」(2000/10/11)
HPアドレス http://www.rinku.zaq.ne.jp/bkaic903/



----- Original Message -----
From: xxx
Sent: Tuesday, September 26, 2000 4:11 PM
Subject: HP拝見。感動のあまり長文メールにて失礼!

 はじめまして。すばらしいHPを拝見し、感動しております。
私は現在、泉佐野市湊町に住み、泉州弁に興味をもつ当年40才の一市民です。
生まれも育ちも泉佐野、とりわけ、ニューヨークで申せば「サウスブロンクス」地区と称される新町の出身であります。ここは昭和50年代に、とある大学がおこなった泉州弁の調査で、「とりわけ数多くの方言が残る」と、新聞に紹介されたこともある、昔ながらの「あらくれ漁師町」です。
 ご案内のように、豊臣秀吉朝鮮出兵のおり、操船技術の高さをかわれて水先案内を命じられ、その功労により、九州五島列島の漁業権独占を許されたという歴史から(ここからは私見ですが)、瀬戸内から九州までの方言が泉佐野へスポット的に集まったと思われます。

 たとえば語尾につく「〜ちゃる」は広島弁の代表格として有名ですし、同年代の友を呼びとめるときの「ちょー、○○君」あるいは「ちょー、待ってよ」などの「ちょー(ちょっと、もしもしの意)」という間投詞は、四国の高知県あたりで使われていると聞いたことがあります。
 さらに年寄り連中がよく使う「〜しちょーくれ(〜してください)」は、先日、大分県の代表的方言だとNHKが紹介していたのを偶然耳にし、驚きました。【大分に関わる 日根野家】【大分の方言】【方言の話

 私も専門家ではありませんので、詳しいことは調べようもありませんが、これらの言葉のルーツは1600年代から「佐野の漁師の船」に乗って各地から集められ、使いこなされ、進化してきたのではないかと考えています。
長文メールで甚だ恐縮ですが、以後は(その1 こんな用法もあり)と、(その2 こんな未収録言葉あり)の2コーナーにわけてお届けいたします(笑)。
 なお、(その2)も併記しますとかなり長くなりますので、ひとまずTOKUMA様の「もう一度メールくれてもいいよ」というご返事でお許しいただいてからお送りしたいと思います。「うっといやー。そんな続編いるかーボケ!」の場合は、そちらからの返信メール不要にて、ふたたびお邪魔いたしませんです、ハイ。

(その1 こんな用法もあり)

かいだるい」・・・相手の理不尽なふるまいに窮した、という人の話を聞いて、同じように呆れ、立腹し、「あなたの腹立ちはよーくわかる」と、同調するとき使う。
例)自家がもつ空き地を隣家の住人にしばしば駐車場がわりに使われ、それとなく注意するとかえって罵倒され反省の色などまったくない、という話を聞かされたとき。「(あきれ声で)かいだるいよー!なんちゅう言いぐさでーなぁ!」

どれる・ぞれる」・・・ここから形容動詞化(ほんまかいな)したものに「ぞれぞれ」がある。
例)子供が冷茶などをコップ一杯に入れてしまい、もち上げて飲めなくなったとき。「そんなぞれぞれ入れたら飲まれへなし(飲めないじゃないか)!」

にくそい」・・・容姿以外にも、相手のエゴな精神やひねくれた性格を非難するときにも使う。
例)封を開けた品物と同じ新品をもらえることになった兄が、未開封を自分がとり、開封済みを弟にあげた。見かねた親が「にくそいえー。兄ちゃん、(自分で)開けたほう取り!」

ももない」・・・古語で「美味(もみ)なし」というのがあり、それが転じて「もむない」→「ももない」にいたる(と思う)。若者には「もも」が定着しているが、新町の老人たちは「もむ」を使う人が多い。

わっとしょう」・・・「わぁ、恐ろしいよう」の進化系。以後、縮まり、「わっとぉろしょう」→「わっとしょう」にいたる。新町の長老には「わっとろしょう」の「ろ」を正確に発音する人が多い。これよりもう一段パンチ力のある「わっとろしゃよー(「わぁ、恐ろしや」+驚きの「よー」)」も健在。
例)カード破産した近所の奥さんの負債総額が「ウン千万」ときいたとき。また、おかしく呆れかえるときも使える。「世界ビックリ人間」で巨乳美女がガウンを脱ぎ、巨大なシリコンおっぱいが大うつしになったときなどに一オクターブ高い声で、「わーっ、とろっ、しょ〜!」とタメながら叫ぶと、泉州の茶の間は盛り上がる(笑)。

以上、自分で読み返してもまったくアホらしくなるメールにて甚だ恐縮です。HPのますますの充実をお祈り申し上げます。

ドクターD  


----- Original Message -----
From: xxx
Sent: Wednesday, September 27, 2000 3:20 PM
Subject: お返事メール感謝。ドクターD第2弾です。
お返事メールありがとうございました。では調子に乗り、(その2)未収録言葉編。

あくかぁー」・・・ダメだよ、の意。「あかん(ダメ)」+「 か (だれがお前なんかにやるものか、などに使われる反語」。一時消えていたが、うちの息子が小学校で感染してきた。若い担い手が育っているようだ。

おーき、ほーかりさん」・・・泉州弁というか、もとは大阪ことば。「おおきに、憚(はばか)りさん(面倒をかけたね、ありがとう)」の意。おもに商売人が、物を運んでくれた人にかける、ねぎらいの言葉。故桂枝雀氏が落語「壷算」の中で使っておられたのを一度だけ聞いたことがある。【別件】豪商食野家が出てくる落語

かだかす」・・・(においを)かぐ。「かぐ」+「すかす」が原型か。
例)「これ、腐ってるんちゃうん?」「におい、かだかしてみー?」

しこる」・・・暴れる、やんちゃな振る舞いをする、の意。もとは河内弁で、「しこお(神輿の上で狂態を示す男)」の動詞形。詳細は司馬遼太郎著「街道をゆく(河内みち)」を参照あれ。子供が屋内で暴れはじめると、「しこるな!」と叱られる。また、男性が上位になり、女性をよろこばせるために****行為も「しこる」と言い表され、これはウマイ。

〜しちょーくれ」・・・「〜しておくれ」が転じた。NHK-BSのふるさと特集番組大分県編で、この「しちょーくれ(大分では縮んで、しちょくれになっていた)」が、代表的方言としてサブタイトルに使われていた。これが大分と泉佐野だけに存在するのは佐野漁民の功労

〜しな」・・・〜の途中の意。もとは大阪ことば。「行きしな(行くとちゅう)」、「帰りしな(帰るとちゅう)」等あるが、「往(い)ぬ」+「しな」で、「いにしな(帰るとちゅう)」は濃い!

せどる」・・・広辞苑に「瀬取(せどり)」があり、「親船の積荷を小船に移し取ること」とある。これが動詞化したもの。
例)部屋の模様がえで食器棚を移動させることになった。まるごと一気にかかえ上げると仕事は早いが、重くて動かない。そこで「食器をせどる」ことになる。バケツリレーよろしく皿類(積荷)を棚(親船)から小分けしておろすのである。この言葉はかつて廻船業で隆盛をほこった食野、唐金が使った業界用語としか考えられない。それを思うと諸行無常に胸があつくなる。「せどる」こそは、今に残る佐野弁の宝石だ。

ずつない」・・・肉体的、精神的にナーバスな状態をさす。これは泉州弁ではなく立派な古語で、広辞苑にも掲載されている。むかしはみんなが使ったのだろうが、今は最長老クラスしか使っていない。特に食べ過ぎ、飲みすぎ、ストレスからくる胃痛の表現には最適。月曜朝の会議に出席のサラリーマン諸氏には、ぜひ「あー、ずつないよー」を流行らせてほしい(笑)。

そこよかろ」・・・「そこ(のところ)は、(あなたの)よかろう(と思うように)」の意。相手に権限を一任し、「あなたが私の立場になったとき、最良と思われるようにはからってくれ」と託すときに使う。
例)知合いの工務店さんに家のリフォームを頼んだ。ドアの取り付け位置について、かなり微細な点で施工の決定をせまられた施主が迷ったあげく、「・・・まぁ、そこは「そこよかろ」にしといてよ」というと、気心の知れた工務店社長は、「よっしゃ、ほな、まかしてくれるケ」となる。数ある泉州弁ので最もすぐれた語だと思う。たった5文字でこれほど深い意味があらわせる言葉は類をみないだろう。しかも会話者間にあらかじめ、「あなたに任せば大丈夫だろ」「よし、悪いようにはしないよ」という信頼関係が築かれている上に、この言葉が命をもって輝くところが秀逸。

力入る」・・・「ちからいる」と読む。相手の言動、物事に対する処置について、機転のきかぬとこ甚だしく、また失態を重ねたりして、思わずこちらが恥ずかしさのあまり「体に力が入って固くなる」状態。ちびまる子ちゃんの後頭部に線がはいって、汗がタラーッと流れている、あの空気だ。
例)冠婚葬祭等で二重、三重のミスをかさねる失態を演じた縁者は、「・・・あいつだけはホンマ、ちからいるのー」と、陰口をたたかれる。Y印乳業の一連の食中毒事件を泉州人がひとことでコメントすれば、「ちからいるでー」となる。

〜ちょう」・・・「ちょうだい」の「だい」が欠落したもの。英語のplease。「ちょう」を核に、進化系がたくさんある。動詞+「ちょう」で、「しちょう(してください)」、「食(く)ちょう(食べてください)」。ここへ「ちゃ」が割りこむと、第三者的な依頼ニュアンスが発生し、「しちょう(してください)」→「しちゃっちょう(してあげてください)」。さらにオプションとして、語尾に婉曲の「な」がつく「〜しちゃっちょーなー(してあげてくださいよ)」、さらに、いうことを聞かない相手へはダメ押しの「い」が加わり、「〜しちゃっちょいなー(してあげてもいいじゃないですかー)」と、合わせ技がくり出される。いずれにしてもこの「ちゃっちょう系」は泉州佐野弁でも最高峰のねばり腰をもつ。

てんて」・・・てぬぐい。幼児語。とくにガーゼ系の小さなものをさす。みなさんもむかしは「てんて」を握ってお昼寝したのでは(笑)?

西の口」・・・泉佐野市大西町あたりをさす。むかしの往来は紀州街道がメインルートだったろうから、佐野村への西の入り口で最初の集落が大西町あたりだったのだろう(この推測は自信がない)。

にんに」・・・おにぎりのこと。幼児語。
例)「腹へった」「にんに食いやー」←ほとんど外国語!

ひだるい」・・・空腹である、の意。これも立派な古語で、広辞苑にもあり、さらに歌舞伎「助六」のセリフにも出てくる。最長老クラスは今も使っている。

まいな」・・・せいぜい。
例)身内が居酒屋をはじめたところ、知合いがさっそく足をはこんでくれたと聞き、お礼かたがた「まいな、行っちゃっちょー(せいぜい行ってあげてくださいね)」。

もっちゃく」・・・「もちあぐねる」の短縮形。もと大阪ことば。桂吉朝氏が落語の中で使っておられた。自分の処理能力をこえ、困惑するときに使う。例)「うちの孫は少食でな。お茶碗一杯のごはんでも、もっちゃくしてらー」。この「もっちゃくする」は、徘かい老人をかかえる家庭でも使える(汗)。

よばれる」・・・ごちそうになる。もと大阪ことば。本来は食べ物につかわれ、わらびもちを食べている子供に、大人が、からかい半分に、「ひとつ、よんでー?」と、声をかけ、「いやー」と返すかわいいやりとりがあった。
この言葉は番外として、相手の内風呂をつかわせてもらうときにも使われていた。まだ内風呂が普及していなかったころ、隣の人がつかわせてもらうとき、「お風呂よばれる」と言った。奥ゆかしい感謝のかおりがただよっている。


以上、長々と失礼いたしました。

(追)
実践編2」の投稿者 江口知子さんにメールさしあげたのですが、アドレスがリンク切れになっておりました。残念です。
 
 それから、実践編へお取り上げくださる由、ぜひお願いします。こちらのアドレスも掲載可です。
 
 ところで私はこれまでHPの作成など、考えたこともなかったのですが、自分も地元泉佐野のことばを紹介できるということを見出し、一気にページ開設へ心がかたむいてきました。なんとかがんばろうと思います。開設成功の折には、ぜひリンクしてください。今後ともよろしくお願い申しあげます。では!

  ドクターD     doctor-d@rinku.zaq.ne.jp




【後記】
是非、ホームページを作ってください。
そして、英語より難しい泉州弁を広げましょう。

渡駒誠


ドクターDです。このたび、おかげさまでHP開設にこぎつけました。
題して「ドクトルDの泉州佐野弁講座」(2000/10/11)
HPアドレス http://www.rinku.zaq.ne.jp/bkaic903/



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